MIRAIS Techが運営する業務委託料前払いサービス『PAYS』をご存知でしょうか。このサービスは、個人事業主が支払サイトに捉われることなく、働いた売上をすぐに受け取ることができる軽貨物運送事業者向けサービスです。

PAYSが開発された背景には、軽貨物業界特有の「支払サイトの長さ」という課題があります。軽貨物業界では、ドライバーに業務委託料が支払われるのが「稼働日から90日後」というケースもあり、業務委託料が支払われるまでの間、駐車場代や燃料代といった諸経費をドライバー自身が立替えなければなりません。こうした軽貨物業界が抱える資金面における課題を解決するために開発されたサービスがPAYSです。

ドライバーが個人事業主として軽貨物運送事業を運営するにあたり、「働いた売上をすぐに受け取れること」は、経営面において大きなメリットがあり、事業を継続していく上で重要な要素であると考えます。
そこで今回は、PAYSの利用データを用いて、軽貨物ドライバーの業務委託料前払いに対するニーズの実態を明らかにしていきたいと思います。

軽貨物業界の支払いサイトに対するドライバーの思い

まず、そもそも軽貨物ドライバーは軽貨物業界の支払いサイトに満足しているのでしょうか。軽貨物ドライバーを対象に、MIRAIS Techが独自で行った「軽貨物業界の支払いサイトに満足していますか?」というアンケート(2020年5月実施)の回答結果がこちらです。

「軽貨物業界の支払いサイトに満足していますか?」|MIRAIS Tech

なんと、ドライバーの82%の人が現在の支払サイトに「満足していない」または「どちらとも言えない」と回答しています。「満足している」と回答した人はわずか18%でした。

このアンケート結果からも、「支払サイトの長さ」が軽貨物業界の課題になっていることがわかります。
「働いた分の報酬はできるだけ早くほしい…」それが、ドライバーの切実な思いなのです。

ドライバーの業務委託料前払いに対するニーズ

では、実際にドライバーはどのぐらい前払いで業務委託料を受け取っているのでしょうか。2022年9月~2023年8月におけるPAYSの利用実績から算出した、利用者1人あたりの平均利用月額がこちらです。

■利用者1人あたりのPAYS平均利用月額:146,960円

2022年9月~2023年8月におけるPAYSの利用実績から算出した、利用者1人あたりの平均利用月額

なお、軽貨物ドライバーの一般的な月間売上額は、30万円~40万円ほどと言われています。この数値と照らし合わせてみると、PAYS利用者は実に報酬の約5割を前払いで受け取っているとみることができます。前払いサービスを利用していない、または、軽貨物業者が前払い希望に対応してくれないといったドライバーの場合、キャッシュフローが苦しくなってしまう可能性が高いことがこの数値からみても明らかだと言えます。

1ヶ月あたりのPAYS利用額分布

次に、「1ヶ月あたりのPAYS利用額分布」について、金額を10万円ごとに区切り、その割合をみています。
※対象月:2023年8月

最も多い層は、「10万円~20万円未満」で42.3%。次いで「10万円未満」が37.7%という結果でした。この2つの層で全体の8割を占めており、大多数は20万円未満の前払い実績となっています。一方で、「30万円~40万円未満」は3.5%、「40万円~50万円未満」は3.8%と、高額の層は低い割合でした。

「1ヶ月あたりのPAYS利用額分布」について

この結果から、傾向としては業務委託料の「一部」を前払いで受け取りたいというドライバーが多いと言えます。ただし、たとえ業務委託料の「一部」だとしても、月に10万円から20万円ほどのお金を、経費や生活費を節約する方法で捻出することはかなり難しいことだと思います。節約等で捻出できなかった不足資金は、他から融通するしかありません。「少し足りない…」という時に、簡単に資金繰りができる術をもっていることは、事業を運営しているドライバーに、大きなメリットと安心感を与えることに繋がるのではないでしょうか。

資金ニーズが高まる時期は?

次に、PAYSの月別利用額を比較して、資金ニーズが高まる時期がいつなのかをみていきます。1ヶ月あたりのPAYS平均利用額を「1」として、月ごとの利用額を比較した結果がこちらです。
※対象期間:2022年9月~2023年8月

PAYSの月別利用額比較|MIRAIS Tech

平均値と比較すると、最も多かった月が12月で112%、次いで11月が108%と、年末の2カ月が上位を占めており、年末は他の時期と比べて資金ニーズが高まる傾向があるとみることができます。

この時期は、軽貨物業界の繁忙期と重なっており、諸経費が平時と比較して増えていることが要因として考えられます。また、年末はイベント等に伴う生活費の出費も増えるため、こういった事業面以外の要因も資金ニーズに影響していると思われます。

ただ、年間を通してみてみると、時期による資金ニーズの偏りはあまり大きくはないということがわかります。言い換えると、業務委託料の前払いに対するニーズは常に存在しており、ドライバーに業務を委託する軽貨物業者は、このドライバーの資金ニーズに年間を通して対応していくことが必要であると言えます。

まとめ

今回はPAYSの利用データを用いて、軽貨物ドライバーの業務委託料前払いに対するニーズの実態をみていきました。

冒頭で述べた通り、軽貨物ドライバーの多くは、「働いた分の報酬をできるだけ早くほしい」という想いをもっています。当然のことですが、ドライバーは資金繰りができなければ事業を運営していくことができません。軽貨物運送の担い手であるドライバーをこの業界に呼び込み、さらに事業を継続していくことができる環境づくりをしていく上では、こうした資金ニーズに業界全体でこたえていくことが必要不可欠であると言えます。

また、先のデータからもわかるように、業務委託料の前払いに対するニーズは時期に関わらず常に存在しています。こうしたPAYSのデータからみえた「業務委託料前払いに対するニーズの実態」を鑑みると、軽貨物業者としては、自社が“ドライバーから選ばれる軽貨物業者”になるためには、今や業務委託料の前払いへの対応は必須と言えるのかもしれません。