今現在、「2024年問題」やインボイス制度の開始など、軽貨物業界を取り巻く環境は大きな変化のタイミングを迎えています。これからも様々な変化が予想される中、「軽貨物業界のより良い未来を構築すること」、そして「軽貨物運送業の社会的地位を向上させること」を目的に様々な取り組みを行っているのが「軽貨物ロジスティクス協会」です。

―軽貨物業界の社会的地位を向上させる―

本メディア『配送王』と軽貨物ロジスティクス協会が目指す先は一致しています。そこで今回は、軽貨物ロジスティクス協会の瀬戸口理事長をお呼びして、同協会の理事も務めるMIRAISの重松社長と対談形式でお話をうかがいました。

協会の具体的な取り組みや存在意義、さらには軽貨物業界の未来について、様々なお話を聞くことができました。ぜひ、ご覧ください。

軽貨物ロジスティクス協会_瀬戸口理事長
プロフィール

瀬戸口 敦(せとぐち あつし)
軽貨物ロジスティクス協会 理事長

2011年に北商物流株式会社を設立。2015年にはプライバシーマーク、2023年にはISO39001認証をいずれも軽貨物業界に先駆けて取得。2023年に軽貨物ロジスティクス協会理事長に就任。

瀬戸口理事長と重松社長の出会い

軽貨物ロジスティクス協会_瀬戸口理事長と重松社長

ーー編集部:本日はよろしくお願いします。早速ですが、お二人の出会いから教えていただいてもよろしいですか?

重松社長:私としては協会に入った当初からもちろん知っている方なんですけど、実は当初、協会のグループLINEに入れてもらえてなくて…。

瀬戸口理事長:そうそうそう。なぜか協会のグループLINEに入ってないっていうミラクルが発生しちゃってたんだよね。

重松社長:瀬戸口理事長達からすると「なんであいつは全然イベントに参加しないんだよ」と。一方で、私としては「なんで協会は何のイベントもやらないんだよ」ってなっていたんですよね。

瀬戸口理事長:そうだったね。なので、印象としても“悪い”というよりも“ない”という感じでした。そんな中で共通の知り合いが食事の席をセッティングしてくれる機会があって、そこで話したのがちゃんと交流したという意味では最初だったかもしれないですね。

重松社長:1年前くらいですかね。

瀬戸口理事長:そうだね、そのくらいかもね。

軽貨物ロジスティクス協会の人選

ーー編集部:では次に、重松社長を軽貨物ロジスティクス協会の理事に人選したことについては、「オファーした」とHPにありますが、その経緯や理由について教えてください。

瀬戸口理事長:オファーさせてもらった頃には重松社長との親睦も深まっていました。そういった中で重松社長に対しての印象として「軽貨物業界のことをよく考えている」、「現状に満足していない」、「上昇志向がある」といった部分を強く感じていましたので、理事にオファーさせていただきました。もちろん私の意向だけではなく、理事会で話し合いがあった際に、他の理事からも賛同する声が複数あったのでやってもらうことになりました。最初は断られたんですけどね…。

重松社長と瀬戸口理事長

重松社長:そうですね。やるからには中途半端にはやりたくないと思っていました。理事をやらせてもらうとなった場合は、当然そこに対する時間も必要になります。自分の会社でも今やらなくてはいけないことがある中で、色々と考えて最初は断ってたんですよね。でも、入れ代わり立ち代わり、理事の方から連絡があって、最後に瀬戸口理事長から連絡をいただいて、一緒に食事をしながらお話をさせてもらい、そこでお受けすることにしました。

瀬戸口理事長:私としては「協会を一新しよう」としていた時で、メンバー含めて空気感を変えていきたいと思っていました。重松社長のキャリアや年齢を考えても適任だと思っています。

軽貨物ロジスティクス協会の概要

ーー編集部:では次に、「軽貨物ロジスティクス協会」の概要について教えてください。

瀬戸口理事長:協会の目的は「業界の地位向上」。その為に何ができるか、何をすべきかを常に考え、取り組んでいます。あとは、加盟いただいている協会員さんの後方支援といったところが主に取り組んでいることです。

加盟社数としては71社(※2024年2月時点)です。最近は、協会員さんからの紹介やHPの反響もあり、軽貨物運送が主業ではない会社さんも加盟してくれています。その他の傾向としては、設立して間もない会社さんの加盟が増えています。社歴が浅い会社さんもそうですし、“軽貨物事業”へ新規参入したばかりの会社さんも多いです。2月から新たに協会に加盟してくれたのは、全てそういった会社さんです。

重松社長:そのような会社さんは、どういったことを期待して協会に入っていただいたんですかね?

瀬戸口理事長:問い合わせがあった会社さんとは必ず理事長面談をさせてもらって、協会に入ろうと思った動機を聞くようにしています。そこで出てくるのは「同業とのつながりが欲しい」、「仕事が欲しい」、「業界のネットワーク(情報)が欲しい」といったところが多いですね。

スタートアップ企業の加盟が増加している要因

ーー編集部:そういったスタートアップ企業の加盟が増えている要因はどういったところだと思われますか?

瀬戸口理事長:協会としてしっかりとメディアリリースを出しているのが大きいと思います。最近で言うと、10月24日を「軽貨物の日」と制定してメディアリリースを出しました。「公的に認められている」、「実態のある協会だ」という印象をもってもらえていることが非常に大きいですね。

重松社長:情報発信に関しては、今かなり力を入れてますもんね。

瀬戸口理事長:そうだね。取り組んでいることを社会に発信していくことは非常に大事だし、「協会がしっかりとした組織だから、加盟している会社もしっかりしている」という認識にも繋がると考えています。

軽貨物ロジスティクス協会具体的な活動内容

ーー編集部:次に協会の具体的な活動内容について教えてください。

重松社長:毎月イベントをやっています。“学び”に特化した勉強会を年に3~4回開催したり、スポーツイベントとしてフットサルやゴルフをしたり、他にも交流を目的とした食事会もあります。こういった様々なイベントを通して、協会員さん同士の距離が近くなり、情報交換や意見交換ができる関係を築けることは協会に加盟するメリットだと思っています。

ーー編集部:勉強会ではどのようなことをやられていますか?

瀬戸口理事長:種類はいくつかありますが、先日実施したのは受講者参加型のワークショップです。グループ分けをして、「営業」「求人」「現場管理」というテーマについて議論しました。それぞれのテーマごとに参加者同士で意見交換することで情報収集ができ、「自分たちはこういう風に取り組んでみよう」といった様々なヒントが得られる機会になったのではないかと思っています。

重松社長:企業としてだけではなく、「個人」の成長という観点からも、参加してもらった方にとっては非常に有意義なイベントだったと思います。

軽貨物ロジスティクス協会が感じている軽貨物業界の課題

ーー編集部:業界を取り巻く環境が大きく変化していく中で、協会として感じている軽貨物業界の課題は何がありますか?

瀬戸口理事長:「コンプライアンス」と「料金」の部分だと思っています。「2024年問題」、「フリーランス保護新法」、「インボイス」等、様々な変化がある中で、そういった法制度への意識はまだまだ低いと言わざるを得ない。料金についてもまだまだ「適正料金」とは言えない金額で受託せざるを得ない状況があることも業界が抱える課題だと思っています。

軽貨物ロジスティクス協会の存在意義や課題解決のための活動

瀬戸口理事長

ーー編集部:今、挙げていただいた課題に対する協会の存在意義や、解決するための具体的な活動はどういったことがありますか?

重松社長:「適正料金」を実現していくためには、国も巻き込んでいく必要があると思っています。軽貨物業者が集まって声をあげていくことで、その声を「国に届けられる」ということに繋げられるのは協会の存在意義だと思っています。1社だけで声をあげていても届く範囲には限界があると思います。業界を変えていくためには、私達も勉強し続けなければいけないのはもちろんですが、荷主にも変わってもらいたい。国に声を届かせていくことは荷主側の変化を促すためには不可欠な要素だと思っています。

また、他にも具体的な活動としては、瀬戸口理事長発案で始めた活動である、荷主に対しての「適正料金への改定のお願い」のサポートをしています。

瀬戸口理事長:そうですね。「適正料金への改定のお願い」の依頼書フォーマットを加盟企業ごとに作成し、提供させていただきました。そこには協会名や判子も当然記載させていただいています。交渉の結果、改定してもらえるのかどうかはわかりませんが、こういった意思があることを荷主へ伝えることが非常に大事だと思っています。

重松社長:こういった活動へのサポートがあることは、協会員さんにとっては大きなメリットだと思いますし、それが協会の大きな存在意義、価値になっているのかなと思っています。

軽貨物業界の展望軽貨物ロジスティクス協会が目指していること

ーー編集部:最後になりますが、軽貨物業界の展望と協会が目指すものについて教えてください。

重松社長:目指すものとしては、やはり協会が定めている「軽貨物業界の地位向上」の実現ですね。その実現に少しでも近づいていきたいです。そして、その想いに共感してもらえる人を一人でも増やしていきたいとも思っています。

瀬戸口理事長:いい機会なので聞きたいんだけど、私も常々「業界の地位向上」と言っているけど、重松理事としてはどのようなところを言ってるか教えてくれる?

重松社長

重松社長:私は(軽貨物業界が)世の中から大切にされている感覚がないんですよね。なくてはならないし、なくなったら困るにも関わらず、適当にあしらわれている。

それは自分たちにも原因があると思っています。業界には社会的常識が欠如している人も多いですし、コンプライアンスを遵守しようという意識がある企業は少ないと感じています。ここは私たち自らが正していかなくてはいけない部分だと思います。

それから荷主さんの意識としては、我々のことを“コスト”だと思っていると感じます。少しでも安くしたいというのは日々やり取りをする中で強く感じています。世の中的にも「送料無料は当たり前」とか、「運賃がかかるなら買うのをやめようかな」という風潮もある。

なので、「配送」という社会インフラを担う人とサービスの質を上げて、皆の意識が少しずつ変わっていくことで世の中から大切にされる業界になっていきたいというところですね。

瀬戸口理事長:「世の中の業界に対しての印象」というところで言うと、実際に聞いた話として、“個人事業主の軽貨物ドライバーだと家のローンが組めない”とか、“社員が「子どもが生まれるので会社辞めます」”とか、“結婚する時に相手の親御さんから承諾をもらえない”とかいった話がある。そういった事象は、現状での業界の立ち位置を表していると思っています。

ーー編集部:軽貨物運送は社会インフラだと思いますので、世の中の意識が良い方向へ変わっていってほしいですね。

瀬戸口理事長:私自身は変わるのを待つのではなく、「変えなきゃいけない」と思っています。そこは一つの“使命”と捉えています。荷主から無理難題を言われることやドライバーの配達時における“あり得ないほどの雑な荷扱い”といった事象が発生していることも耳にします。そこは当然改善していかなければいけない。

でも、私は軽貨物業界の未来は明るいんじゃないかなとも思っています。世の中的にも軽貨物業界の若い経営者に目を向け始めているし、少しずつ業界も業界の見られ方も変わってきている実感もあります。これから変わるチャンスがあるというだけでもプラスじゃないかなと思っています。協会として目指しているところにたどり着けるように力を合わせて頑張っていきましょう。

重松社長:私も微力ながら精一杯取り組んでいきます。今後ともよろしくお願いします。

まとめ

今回は、「軽貨物業界の未来について語り合う」というテーマでお話を伺いました。軽貨物ロジスティクス協会が目指している「業界の地位向上」は奇しくも本メディア『配送王』と一致しています。協会が行っている様々な取り組みは、私たちMIRAISにとっても非常に参考になりました。そして何より、「業界を変えていく」というお二人の強い想いは、より良い業界を築いていくことを予感させてくれました。

『配送王』はこれからも軽貨物ロジスティクス協会の取り組みと、より良い業界の未来づくりに注目していきます。


取材協力

軽貨物ロジスティクス協会
https://k-logistics.jp/