個人事業主のドライバーとして、軽貨物運送業を営む上で重要な業務の一つに「確定申告」があります。個人事業主として開業するにあたり、「確定申告」という言葉自体はよく耳にすると思います。
しかし、“「確定申告」が何なのか”を正しく詳しく理解している人は、実は意外と少ないのではないでしょうか。税務に関わる業務のため、「何となく難しそうでとっつきにくそう…」という印象をもっている方も多いと思います。

税理士‗石田雄介

そこで今回は、個人事業主にとって重要な業務である「確定申告」について、A.L.C.S.総合事務所の石田雄介先生にわかりやすく教えていただきたいと思います。
石田先生、よろしくお願いいたします。

A.L.C.S.総合事務所-石田雄介(いしだ・ゆうすけ)

【執筆者プロフィール】

石田雄介(いしだ・ゆうすけ)
1984年東京都生まれ。大学在学中に学んだ簿記をきっかけに、税理士への道を志す。2008年、A.L.C.S.総合事務所に入社。現在は、同社にて税務会計に携わるチームのリーダーを務める。

    そもそも「確定申告」とは何ですか?

    確定申告とは、各個人の様々な収入にかかる税金(所得税)の金額を計算し、税金の支
    払いを行うための手続きをいいます。

    計算の対象となる期間は、毎年1月1日~12月31日です。
    なお、税務署への申告や税金の納付期限は、対象となる年の翌年3月15日までです。

    個人事業主として開業届などを税務署に提出したら、売上・経費などを帳簿付けして、上記期間分を集計したデータをもとに確定申告書類を作成します。なお、税金が課される対象となるのは、売上などの収入から経費を差し引いた、いわゆる儲け(所得)の部分となります。 

    個人事業主は「確定申告」を必ずやらないといけないのですか?

    個人事業主が「事業所得」(以下、「所得」)を得ている場合は、確定申告を行わなければなりません。

    ただし、所得が年間で48万円以下の方は、確定申告が不要です。不要である理由は、所得に対して基礎控除48万円が引かれるため、そもそも税額がかからないためです。

    なお、所得が48万円以下の方でも、確定申告を行った方が良い場合もあります。あらかじめ事業収入から源泉所得税を控除されている方は、確定申告を行うことによってその控除された税金を還付してもらうことができます。

    申告義務のある者が「確定申告」をやらないとどうなるのですか?

    確定申告の義務のある個人事業主が確定申告をしなかった、または、税金の納付をしなかった場合は、本来納めるべき税金以外に、延滞税・無申告加算税・重加算税などを追加で納めなければならない場合があります。

    注意
    • 延滞税・・・期限までに税金を納めなかった場合の罰金
    • 無申告加算税・・・期限までに税務署の申告を行わなかった場合の罰金
    • 重加算税・・・所得を故意に隠したり、確定申告をわざと行わなかったりした場合の罰金

    また、後述する青色申告の承認を受けている個人事業主が期限内に確定申告をしなかった場合は、本来所得から特別に控除することができる55万円控除が使用できず、控除額は10万円のみとなります。その分、課せられる所得税の金額が高くなってしまいます。

    「青色申告」と「白色申告」の違いについて

    個人事業主の所得税の確定申告の方法には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があ
    ります。

    青色申告の特徴として、原則は複式簿記で帳簿をつけることが義務付けられています。
    具体的には、売上・経費を記録する際に「仕訳帳」や「総勘定元帳」を用いて帳簿を作成する必要があります。また、青色申告を行う場合は、事前に税務署に承認の申請が必要です。これらの条件を満たす場合、青色申告の税制上の優遇として、所得から特別控除55万円を使用することができます。(電子申告で申告をする場合は、さらに10万円控除追加)上記以外の方は、白色申告として確定申告を行うこととなり、特別控除を使用することができません。

    石田雄介

    また、特別控除以外にも青色申告のメリットはあります。青色申告であれば、個人事業で赤字(損失)が生じた場合に翌年以降3年間の赤字分の繰越控除が認められ、翌年以降に事業が黒字となった場合、その赤字と相殺することができます。これによって、事業所得が発生した場合に支払うこととなる所得税を抑えることができます。

    こういった特典を活用できるように、青色申告と白色申告の違いをしっかりと理解し、毎年の確定申告を青色申告で行うことが大切です。

    「確定申告」を行う際に聞きたいことが出た場合、どこを頼れば良いのか?

    会計事務所や税理士に問い合わせをすれば、顧問契約の内容によっては記帳代行・税務アドバイス・資料作成アドバイスなどをしてもらえます。

    記帳代行はしてほしいが、顧問契約までは…という方は、「青色申告会」という納税者団体があり、入会金・年会費を支払うことによって記帳代行から確定申告までを依頼することができます。

    「確定申告は最初から最後まで自分でやる!」という個人事業主の方は、管轄の税務署にご相談いただくか、確定申告期限が近づいてくると「無料相談会」なども各所で開催されているので、そちらでご相談ください。

    「確定申告」をする際のポイントは?

    かたいことを申し上げるかもしれませんが、「正しく誠実に」が一番です。

    この姿勢を大切にしていただかないと、会計事務所としても信頼関係が築きにくいというのが正直な意見です。会計事務所は、お客様からお預かりした会計書類を集計し、税金を計算するところですので、「業務外の経費については認められません」など厳しいことを申し上げる必要が出てきます。こういった助言をしっかりと聞いて、確定申告業務をすすめていただくことはとても大切です。

    ただ、ご自身で計算なさっている個人事業主の方の中には、我々目線では経費として計上できたものをしていなかったため、その分、税金を多く納めている方がいらっしゃいます。正しい知識に基づいて確定申告を行うこともとても重要なことです。

    会計事務所や関連行政機関とのコミュニケーションを綿密に取り、正しくより良い納税を行うための確定申告を行ってください。

    まとめ

    石田先生、ありがとうございました。確定申告の基礎や青色申告のメリットなど、個人事業主の方にとって役立つ情報ばかりでした。
    事業を営む方は専門家や関連機関を活用しながら、確定申告に関する「正しい知識」を身につけ、そして、「正しく誠実」な姿勢で毎年の確定申告業務を行うようにしましょう。

    確定申告に関係する記事はこちら!/


    取材協力

    A.L.C.S.総合事務所 様
    https://www.alcs.co.jp/