草間 政好(くさま・まさよし)
株式会社MIRAIS Tech
マネージャー
2007年、大学卒業後、パチスロメーカーに就職し、営業職を経験。2009年にゲーム業界に転職し、プロジェクトマネージャーを務める。2020年、株式会社MIRAIS Techに入社し、営業・サービス開発などを担当。
IT業界から軽貨物業界へ
私の転職のきっかけは、親会社であるMIRAISの重松社長と高校の同窓会で10年ぶりに再会したことです。当時、私はIT企業でゲーム開発のプロジェクトリーダーをしていました。このことを重松社長に伝えたところ、「自社で開発しているサービス(=業務委託料前払いサービス『PAYS』)について少し意見を聞きたい」と言われ、そこから開発中だったPAYSの話やお互いの仕事の話で盛り上がりました。
それを機に重松社長とは同窓会以降も何度か打合せを行うようになり、その中で現在勤めている会社であるMIRAIS Techの北澤社長(当時、MIRAISのIT戦略部長)も紹介していただきました。そして、PAYSがリリースされるというタイミングで、「MIRAIS Techという会社を新たに立ち上げるから、創業メンバーとして一緒にやらないか」と重松社長からお誘いを受けました。
IT業界とは全くの別業界であるため、正直なところ転職することに少し躊躇はありました。ですが、MIRAIS Techは軽貨物業界に向けてITサービスを提供する会社だったため、「今まで培ったスキルを生かしながら、たくさんの新しいチャレンジができる」と思い、私は軽貨物業界への転職を決意しました。
IT業界と軽貨物業界の「違い」と「似て非なるもの」
まず、私が感じたIT業界と軽貨物業界の大きな違いからお話します。私が10年間働いたIT業界は「お客様のニーズを創造する商品をつくる」ことが基本的な考え方でした。これに対し、軽貨物業界は「お客様のニーズに応えるサービスを提供する」ということが求められます。
IT業界はどちらかというと、市場にないサービスをゼロからつくり上げるので、市場のニーズはサービスの提供者がつくり出すという面があります。一方で、軽貨物業界は「お客様の荷物を大切に運んでもらいたい」という明確なニーズがあり、このニーズに適切に応えるためのサービスを提供していくことが求められます。そのため、軽貨物業界に向けてサービスを開発、提供していく上では、よりお客様のニーズを細かく正しく把握していくことが大切だと感じています。
次に似ているところを述べると、それは商流が「多重下請け構造」になっているという点です。IT業界でも大手開発会社が発注を請けたら、下請けに回し、下請けが孫請けや個人事業主に作業を依頼するといった構造がありました。これは軽貨物業界も同様であると思います。
しかし、同じ多重下請け構造においても「似て非なるもの」は存在します。それは、契約書や発注書といった証憑書類の取り扱いに関する違いです。IT業界ではトラブル回避のため、案件ごとに細かい契約書が必ず締結され、開発作業は契約書の内容に沿って進められています。一方、軽貨物業界では電話やLINEでの口頭発注に近い形で依頼が行われ、その後も請求書のやり取りのみで支払いをするといった“契約書や発注書が存在しない”ケースが多分にあります。
当初、私は「後々、請求金額の違いで争いになったりしないのか」、「請けた後に条件の認識に違いがあって困ったりすることはないのか」など、色々と疑問に感じていました。よくよく話を聞くと、“配送の前日に案件を請け、請けたその日に担当ドライバーを決めて翌日に配送してもらう”といった、IT業界にはないスピード感で動いている業務も多数存在するため、契約書が後回しになる、または口頭発注で完結するという商習慣がつくられてしまったのだと知りました。しかし、「口頭で聞いた運賃と違う金額で請求がきた」や「税抜きかと思ったら税込みだった」など、口頭発注だからこそ起こり得る問題が発生しているという話を耳にすることが多いのも事実です。
発注書の発行や契約書の締結といった実務は非常に面倒な作業ですし、お互いがトラブルにならなければ無用の産物なのかもしれません。しかし、万が一のトラブル時に自社を守ってくれるのは、契約書や発注書などの証憑書類です。こういった重要である一方、面倒な作業こそ、IT技術を取り入れるべき対象であり、効率化を図るべき作業なのではないかと考えます。
このように業界が抱える諸課題について、「ITを用いることで解決できる課題はまだまだ多く存在している」と日々強く感じています。
軽貨物業界での私の「仕事」と「使命」
前述した通り、私の前職はオンラインゲームのプロジェクトマネージャーでした。具体的には、ゲームプロジェクトを組織面及び売上面において管理する仕事になります。当然のことながら、プロジェクトの管理の中で多数のIT技術を取り入れていました。
こうした前職で得た経験やスキルを活かし、現在、私はMIRAIS Techで以下の業務を主に担っております。
- 業務委託料前払いサービス『PAYS』の営業・導入支援・アプリ改修
- Webページの制作・営業
- MIRAISグループのDX化促進
MIRAIS Techは「ITの活用を通して、社会を再定義し、未来へと“つなぐ”」ことがミッションです。そのミッションを達成すべく、私は上記の業務を通じて、「軽貨物業者様のDX化を促進することで、業界の在り方を再定義し、各企業と業界全体を活性化させる」ということを目標に取り組んでいます。
DX化というと難しく聞こえますが、端的にいうと「ITの力を用いることで新たな仕組みを構築し、面倒な作業や業務を効率化する」ことです。こうした効率化を図るための新たなサービスを提案し、導入のサポートをしていくことが私の主な業務になります。
軽貨物業者様に営業を行う中で私が感じるのは、「軽貨物業界では、ITサービスの利活用が積極的に行われていない」ということです。多くの経営者の方と打合せを行うのですが、IT導入に関して難しいイメージをもたれている方はたくさんいます。ただ、この面に関しては、ほとんどの経営者の方はIT導入の意義を説明すると、その効果や便利さを理解してくださいます。
問題は、実際にITサービスを利用される方が高齢者であったり、PCスキルが乏しかったりするため、運用面でのハードルが高くなってしまうことであり、これが原因で導入に二の足を踏んでしまうということがよくあります。確かにIT技術というのは覚えるまでに多少の時間はかかります。「自社の社員に学ばせる時間がない」といった心配の声もわかります。しかし、IT導入のための時間を捻出し、IT技術をうまく取り入れることができれば、これまで以上に業務を効率化することができ、結果としてより多くの時間を生み出すことができるのです。
例えば、弊社の業務委託料前払いサービス『PAYS』を導入していただくと、以下のような業務効率化のメリットを得ることができます。
- ドライバーとの業務委託契約にて、前払いに関する規定を設けることなく業務委託料の前払い制度を導入できる
- PAYSサービスに登録しておけば、経理上の手間をかけることなく前払いができる
- システム内に利用履歴がすべて残っているため、帳簿をつけることなく前払い実績を簡単に締め作業に反映できる
※効率化という観点以外でも、経営面においてはキャッシュフローの改善や、求人広告の効果をあげられるといった導入メリットもあります。
PAYSなどのITサービスの導入を通じて、「軽貨物業者様の“IT技術を活用した業務効率向上”の手助けをし、業界全体の活性化を図ること」、これが私の使命であると考えています。この使命を果たすために、どのようにしたらIT技術の有用性をお客様に伝えられるかを常に考え、工夫しながら営業活動を行っています。
軽貨物業界の「伸びしろ」をつくる
市場では、今後もECサイトの普及や利用率の増加が見込まれています。社会全体でこうした動きに対応していく上で欠かせない要素が、軽貨物配送サービスのさらなる発展です。軽貨物業界がより発展していくためには、私は2つの条件をクリアする必要があると考えています。
IT技術の積極的な採用
1つ目は、IT技術の積極的な採用です。前述した通り、IT技術をもっと取り入れることで、業務の効率化が図ることができ、これにより新たな「伸びしろ」をつくることができるのではないかと思います。Amazonの配送は良い例で、AI技術を取り入れた結果、お荷物のピッキングからルート作成までが自動で行われるようになり、ドライバーの手間が大きく減りました。作業効率を向上させることは、実配送に費やす時間(=ドライバー1人当たりの配達数)を増やすことに繋がります。
また、AI技術の活用と言っても、システム自体が専門的な知識を要することなく活用できるつくりであるため、より多くの方が配送業務に従事しやすい仕組みづくりも実現されています。まさにIT技術を活用して、配送サービスの供給力向上と人財流入といった「伸びしろ」をつくり出した良い例だと言えます。
お客様の配送サービスに対する認識の変化
2つ目は、お客様の配送サービスに対する認識の変化です。昨今の宅配では「置き配」が主流になりつつあり、再配達という非効率な業務が減ってきています。政府も「物流2024年問題」の解決に向けて「置き配」にポイントを付与するといった政策の検討を始めています。以前は牛乳配達などでしか行われていなかった「置き配」という配送方法ですが、こういった新たな配送方法をお客様が許容してくれることが「伸びしろ」をつくる上では重要です。
私としては、お客様が利益を享受できることは受け入れられると考えています。「置き配」はお客様にとっても、再配達の連絡が不要になる、また不在でも商品を受領できるなどのメリットがあるため、市場のニーズが変化する可能性は十分にあると思っています。「配送効率向上を実現するための新たな取組みをお客様が受け入れていくこと」、これも軽貨物業界が新たな「伸びしろ」をつくり出し、より発展していく上では大切な要素であると思います。
最後に
最後になりますが、軽貨物配送は、効率化を行うことで売り上げや利益を向上させることができるお仕事だと私は思います。では、この効率化を行うための1歩目は何か。それは「この作業は面倒だな」という気づきをもつことです。この気づきがあれば、業務の自動化や効率化の方法を検討し、仕組みを構築することができ、結果として、大きな利益改善を図れるとともに、新たな「伸びしろ」を生むことにも繋がります。
まずは、皆さんも日々の業務の中で「面倒だな」と感じるものを探してみることから始めてみてはいかがでしょうか?もしかしたら、それが今後の軽貨物業界の大きな発展につながるかもしれません。