「軽貨物ドライバー」というお仕事に興味をもった方の多くは、まず初めに、この仕事の内容や条件面などをインターネットで検索すると思います。

中でも、“一番気になること”と言えば・・・。
「軽貨物ドライバーは、どれぐらい稼げるのか!?」ということ。

報酬は、そのまま自身の生活水準に直結します。そのため、ドライバー希望者にとって「報酬」は、ドライバー業を選択するかどうかを判断する上で、最も重要な要素になると言っても過言ではありません。

もし、自分が想定している報酬水準をクリアできなかった場合、生活水準の見直しをせざるを得ません。したがって、「仕事を開始する前に想定していた報酬」と「実際に就労した後に得られる報酬」に差異が生じることは、絶対に避けなければいけません。

にも関わらず、ネット上にある軽貨物ドライバーの募集広告には、この報酬に関して過大広告と捉えられてもおかしくないような表現がされていることがあります。「月〇〇万円以上稼げる」という文言をよく目にしますが、「本当にそんなに稼げるの?」と疑問に感じる広告もあるでしょう。こうした広告がドライバー希望者の困惑を招いている可能性もあります。

また、実際にその金額を稼げるとしても、「その報酬を得るためには、どのぐらいの業務量をこなす必要があるのか」という業務の詳細については、見当もつかないと思います。

そこで今回は、軽貨物ドライバーのリアルな報酬事情について、MIRAISの報酬に関するデータを一例として用いながらお伝えしていきます。


月額報酬割合
配送種別
【データ概要】
  • 対象月:2021年10月 
    ※年間売上から算出した平均月間売上の数値と最も近い月
  • 対象者:MIRAISと業務委託契約を締結しているドライバー
    ※協力業者のドライバーは除く
  • 報酬額:配送業務に伴う報酬の金額のみ
    ※消費税や立替金などは含まない

月額報酬は「30万円以上40万円未満」の層が最も多い

まずは、「いくら稼いでいるドライバーがどれぐらいいるのか」について、月報酬額を10万円ごとに区切り、その割合をみてみましょう。


月額報酬割合

最も多い層は、「30万円~40万円未満」で36.5%。次いで「20万円~30万円未満」が35.4%という結果でした。この2つの層で全体の71.9%を占めており、軽貨物ドライバーをやられている方の多くは、この仕事を生計の軸にしていることがわかります。

一方で、「1円~10万円未満」と「10万円~20万円未満」の合計も19.3%にのぼり、空き時間の副業として従事されている方や、他社の配送業務と掛け持ちでやられている方も少なくないようで、軽貨物ドライバーの多様な働き方が見て取れます。

「宅配」と「企業配」ではどちらが稼げるのか

次に、配送種別ごとの平均月額報酬をみていきます。
「宅配」および「企業配」、それぞれ定期稼働(=朝から夜までの稼働を週5日程度)した場合、どれぐらい稼ぐことができるのでしょうか。結果はこちらです。


配送種別

報酬に関しては、宅配の方が高いことがわかります。企業配と比較すると、月で約74,000円多いという結果でした。

しかし、一般的に宅配は、業務に慣れて個数を捌けるようになるまで一定期間かかるため、最初からこのような報酬を得ることはなかなか難しいと言えます。

また、報酬自体が配送するエリアやドライバー自身の配送スキルに大きく起因しており、企業配に比べて個人差が大きくなりやすいという特徴もあります。熟練ドライバーは、平均値を大きく上回ることがあり、一般的に「閑散期」と言われる時期においても高報酬を得ることも可能ではありますが、一方で、始めたばかりの方は、スタート時は平均値に届かないこともあるということを理解しておくべきです。

一方で、企業配は、宅配と比較すると報酬の額は低くなる傾向があるものの、宅配よりも報酬額が安定しやすいというメリットがあります。
宅配、企業配ともに、報酬面については一長一短あるため、ご自身が希望する報酬水準と照らし合わせて業務を選択することをおすすめします。

ちなみに、定期稼働ではなく、都度、業務を受託する形式の「スポット配送」のみをやっている方の平均月額報酬は、200,136円でした。報酬額だけをみた場合、「スポット」よりも「定期便」に従事した方が多く稼げると言えるでしょう。

最も稼いでいるドライバーの報酬額と業務内容

次に、最高月額報酬について紹介します。
今回の対象月における最高報酬額は、「507,490円」でした。業務内容は、以下の通りです。


  • 5:00~8:30  食品配送(定期便・常温配送)
  • 9:00~16:30  食品配送orスーパーお届け便orお弁当配送(全てスポット便)
  • 17:00~20:00 食品配送(定期便・冷蔵配送)

特筆すべきは、朝と夜に2本の定期便をやっているものの、メインとなる日中の時間帯は定期便ではなく、スポット便の組み合わせで稼働している点です。

「稼いでいるドライバー=宅配でとても多くの荷物を捌いている」というイメージがあるかもしれませんが、このようにうまく配送案件を組み合わせることで、高い報酬を得ることも可能だということがわかります。

なお、稼働日数は30日で、1日の業務時間に長短はあるものの休日はほぼ取らずに稼働されていました。
この他にも、「日中に企業配の定期便、夕方から夜にかけて宅配の定期便」という業務内容で週6日ほど稼働して、50万円近く稼いでいるドライバーもいます。
いずれにしても、複数現場を掛け持ちし週6日ほど稼働することが、より高い報酬を得るための一つの方法であると言えるでしょう。

なお、対象月において最も少ない報酬額は「38,880円」で、お弁当配送を8日間稼働されていました。このように報酬面ではなく、自分が希望する働き方を優先して業務に従事することができるのも、軽貨物ドライバーの魅力の一つかもしれません。

「繁忙期」と「閑散期」における報酬額の違い

最後に補足の情報として、対象月のデータからは離れて、軽貨物業界において一般的に「繁忙期」と「閑散期」と言われるそれぞれの時期に関する報酬について触れておきます。ここでは、「宅配」に焦点をあてて、この二つの時期の報酬額の違いをみていきます。結果は以下の通りです。


最高月額報酬(宅配)平均月額報酬(宅配)
繁忙期
(2021年12月)
826,260円522,127円
閑散期
(2022年1月)
537,080円412,424円

繁忙期の12月において、宅配業務に従事したドライバーの中での最高月額報酬は「826,260円」でした。平時である10月の最高月額報酬と比較して、30万円以上多く稼ぐことができています。一方で、閑散期における最高月額報酬は「537,080円」となり、時期により報酬額に違いがあることがわかります。また、平均月額報酬をみても同様で、12月と1月では、「109,703円」の差がありました。

なお、業界全体で閑散期と言われる時期であっても、宅配だけに焦点をあててみてみると、最高月額報酬・平均月額報酬ともに、平時である10月の数値を上回っていることがわかります。このことから、従事する業務内容によって、繁忙期と閑散期自体も変わってくるということがわかります。
軽貨物ドライバーというお仕事を検討する際は、こうした時期による報酬の違いについても考慮することが必要です。

どれぐらい稼げるか”を正しく把握する

今回は、MIRAISのデータをもとに軽貨物ドライバーの「リアルな報酬事情」について紹介しました。
先述した通り、今回のデータはあくまで一例です。「宅配」に特化している軽貨物業者であれば、月額報酬割合は高報酬の層の割合がより高くなるでしょう。また、この業界は繁忙期と閑散期における売上の波動が大きく、時期によってドライバーの報酬額は変化します。このように軽貨物業者や時期によって、報酬に関する数値が変わってくることは事実です。

大切なことは、こうした報酬に関する予備知識を把握したうえで、さまざまな情報に触れることだと思います。特に軽貨物ドライバーというお仕事を考えている方は、ネット上に溢れている「軽貨物ドライバーの報酬」に関する情報について、その情報の一部だけを見て報酬額をイメージするのではなく、予備知識と照らし合わせながら正しく報酬の全体像を把握していくことが重要です。
今回ご紹介した「リアルな報酬事情」が、“どれぐらい稼げるか”を正しく把握する際の一つの指標になってくれたら幸いです。