軽貨物運送業界は、契約体系や商習慣、業務フローなどがある程度固定化されている業界であると思います。しかしながら、「固定化されているから完成している」ということではなく、そこには数多くの課題が存在しています。
例えば、軽貨物業界における大きな課題の一つに「ドライバー不足」があります。軽貨物配送サービスが社会インフラの一つになっている今、この課題は軽貨物業界だけではなく、社会全体の課題とも言えます。
私たちMIRAIS Techは、こういった諸課題を解決することを通して軽貨物運送業の在り方を再定義していきたいと考えています。
そして、こうした想いに基づき開発したサービスが、業務委託料の前払いサービスである『PAYS』です。今回は、軽貨物業界における課題に対して、この『PAYS』がもたらす意義について述べていきたいと思います。
【プロフィール】
北澤貴彦(きたざわ・たかひこ)
2006年、情報処理の専門学校卒業後、独立系SIerにプログラマーとして入社。その後、ベンチャー企業にてプロジェクトマネージャーとして勤務し、2014年に退職。株式会社FOX(現、MIRAIS)にてドライバーとして働いた後、IT戦略部長に就任。2020年、株式会社MIRAIS Tech(株式会社MIRAISの子会社)設立と同時に同社代表取締役社長に就任し、現在に至る。
軽貨物業界の課題
軽貨物運送業界の支払いサイトは、他業界と比較すると長い傾向にあります。軽貨物業者からドライバーに支払われる業務委託料が、稼働してから60日後の支払いになるということも珍しくありません。
その原因として、軽貨物運送業界では、荷主の依頼を軽貨物業者が請け、さらに軽貨物業者が実配送を担う個人の業務委託ドライバーに委託するという「多重下請構造」が常態化していることが挙げられます。
こうした商慣習が背景にある中で、ドライバーは業務委託料が支払われるまでの間、ガソリン代や駐車場代、高速料金など配送業務をおこなう上での経費を立替える必要があります。
当然にしてドライバーの資金繰りは厳しくなりがちで、これが「定着率の低迷」へと繋がったり、ドライバー希望者の「新規参入の障壁」にもなっています。
このように、軽貨物業界特有の「支払サイトの長さ」が、業界の大きな課題である「ドライバー不足」の一つの根本的な原因となっているのです。
配送案件を抱えている軽貨物業者にとっても、支払サイトの長さが原因で採用機会を損失してしまうことは極めて大きな問題です。配送案件があっても、それを遂行してくれるドライバーが存在しなければ、事業は成り立ちません。
特にコロナ禍以降は、「巣ごもり消費」の増加に伴い軽貨物配送のニーズが高まっており、「人手不足」という問題はより深刻化しています。これは、社会のインフラを維持するという観点からも極めて大きな問題と言えます。
また、軽貨物業者の中には、先述したドライバーの資金繰りという問題を解決するために、個別にドライバーの「業務委託料の前払い」に対応している業者もあります。
ドライバー数を増やしていくためには効果的な施策であると言えます。しかし、ドライバーの前払いニーズに個別に対応することは、軽貨物業者の作業負荷を増大させます。
さらには、信用に関わる重要な経理業務において、ミスを発生させてしまうリスクを高めることにもなるでしょう。
このように、業界特有の「支払サイトの長さ」という一つの課題が、業界全体の「人手不足」や軽貨物業者の「管理業務の増大」など、多くの課題に派生しているという現状があるのです。
解決のために
これまで述べた「支払いサイトの長さ」に起因する諸課題を解決すべく、MIRAIS Techは業務委託料の前払いサービスである『PAYS』を2020年5月にリリースしました。
『PAYS』は、業務委託ドライバーがスマホアプリを使って前払い申請を行うと、業務委託料がリアルタイムで入金されるというサービスです。
ドライバーは『PAYS』を利用することで、業務委託料の支払日を待つことなく、働いた分をすぐに受け取ることができます。
『PAYS』の開発を行うにあたって、自社でドライバーに「軽貨物業界の支払いサイトに満足していますか?」というアンケートをとったところ、実に82%の人が現在の支払いサイトに「満足していない」または、「どちらともいえない」という回答をしました。やはり、「働いた分の報酬をできるだけ早くほしい」というのは、ドライバーの切実な思いなのです。
軽貨物業者にとっては、『PAYS』を導入することでドライバーからの前払いのニーズにリアルタイムに対応することができます。これはドライバー満足度の向上へと繋がり、ひいてはドライバーの定着率向上という効果を生みます。また、求人媒体において人気の検索キーワードである「日払い」、「週払い」をPRすることができるため、「採用数の増加」も期待できます。
業務的な観点においては、ドライバーからの突発的な前払いの要望に対応するには「振込」、「業務委託料処理」、「履歴保持」など多数の経理業務が生じます。軽貨物業者は、『PAYS』を導入することで、こうした経理業務を大幅に削減することができ、経理担当者の業務効率を向上させることができます。
まとめ
繰り返しになりますが、『PAYS』は、「支払サイトの長さ」に起因する諸課題を解決するために開発したサービスです。
・ドライバーが抱える「資金繰りの厳しさ」
・軽貨物業者が抱える「人手不足」や「膨大な管理業務」
『PAYS』を運営していくことで、こういった課題を解決し、業界への「人材の流入」や軽貨物業者の「業務の効率化」を促進していきます。さらには、『PAYS』がもつ意義や効果を業界全体へと波及させ、軽貨物業者と従業員、そして、ドライバーがより笑顔で働くことができる環境づくりへと繋げていきます。
最後になりますが、「支払サイト」以外にもこの業界に存在する課題は数多くあると思います。私たちは、こういった諸課題に向き合い、従業員やドライバーの要望・思いを汲み取り、
「ITを用いた労働環境の改善」
を真剣に考え、実現する会社でありたいと思っています。
そもそも私たちMIRAIS Techは、軽貨物運送業を主とするMIRAISのIT分野における子会社として設立された会社です。これからもITの力を軽貨物業界に投入し、「軽貨物業界を魅力ある業界へと変えること」を一つの大きな使命として掲げ、『PAYS』に続く新たなチャレンジを続けていきます。