プロフィール

束原之裕(つかはら・ゆきひろ)
株式会社MIRAIS 軽貨物事業部長

2006年、大学卒業後、様々な業種の会社で新規営業、ルート営業、配送業務を経験する。2014年に株式会社FOX(現、MIRAIS)に入って以降、ドライバーや支店長、営業統括部長を経験。2022年より軽貨物事業部長に就任し、現在に至る。

「荷主」に対する想い

束原之裕(つかはら・ゆきひろ) 

昨今、荷主様によるAI技術を駆使した配送の効率化やヒューマンエラーを未然に防ぐためのシステムの導入がすすめられ、配送現場における業務改善が急速に行われています。配送が効率化されることでドライバーの環境が改善され、それが軽貨物業界に新規参入するドライバーの増加へと繋がるなど、荷主様による業務のIT化は軽貨物業界にとって一つの大きな変革となりました。

一方で、ITの力だけでは解消しきれない「データと現場の実態との乖離」という問題も同時に発生しています。データを重視するあまり、実際には予定時間内に配り終えることができない物量がドライバ―に課されるなど、業務過多の状況が生じている現場もあります。また、それに伴い12時間以上の労働時間が常態化しているケースなども発生しています。

私としては、今後はこういった「IT化により生じた諸課題」に関して、荷主様と相談しながら改善を図り、ドライバーにとってより良い労働環境を構築していけるよう努めていきたいと考えています。

この他、現在、ドライバーを取り巻く環境としては以下のことが挙げられます。

  • ガソリン代、車両代、車両メンテナンス代などの価格高騰に伴うドライバーの業務コストの上昇
  • インボイス制度の開始によるドライバーの可処分所得の減少

このようにドライバーを取り巻く環境は、年々厳しくなっている現状があります。

現在の日本において、軽貨物配送サービスとそれを担うドライバーは、社会にとってなくてはならない存在だと言えます。ラストワンマイルは日本のインフラと言われていますが、実配送を担うドライバーがいなければインフラとしての機能を維持することはできません。

そのドライバーに対して、安定した生活を保障し得る運賃を支払うことは、当然のことながらとても重要なことです。それができなければ、ドライバ―離れは加速し、軽貨物配送という社会インフラの根幹を揺るがしかねない状況に陥ってしまうことになります。

束原之裕(つかはら・ゆきひろ) 

軽貨物配送サービスを既に利用している、または利用を検討している荷主様におかれましては、物流コストを設定する際、「個人事業主であるドライバーがどのくらいのコストをかけて配送しているのか」といった軽貨物業界の構造を改めてご考慮いただけると幸いです。これによって、より良いサービスの提供と軽貨物配送サービスという社会インフラの維持が可能になると強く感じています。

「協力業者」に対する想い

軽貨物事業者として事業運営をしていく上で、同業他社である協力業者様はなくてはならい存在だと日々感じています。

急な相談事や配送面においてお力添えいただき、いつも助けられています。また、様々な協力業者様とお付き合いしている中で、各会社様が大切にしていることや独自の取組などを伺うことで、多くのことを学ばせていただいています。

束原之裕(つかはら・ゆきひろ) 

私が協力業者様とお取引をする際に大切にしていることは、次の3つです。

  1. お互いに業務に責任を持って取り組むこと
  2. 「軽貨物業界をより良い業界に変えたい」というビジョンを共有できること
  3. 困ったときに助け合えること

協力業者様とお取引をするにあたり、なぜ、この3つを念頭においているかというと、以下のような業者間トラブルを耳にすることがよくあるからです。

  • 協力業者様のドライバーに事故やトラブルが発生した際のレスポンスが悪い(結果的に元請けの会社が対応する)
  • 業務委託契約書を取り交わしていないことが原因で起こる諸問題
  • 口頭での受発注を行うことで起こるトラブル
  • 契約解除までの期間を守らない一方的な解約

こういったトラブルを避けるために、新たに協力業者様とのお取引を開始する際は、その業者様が先述した3つの事項に合致しているかをよく考え、判断しています。

一方で、軽貨物業界では、こうした社会通念上における正しい業者間取引が行われていない状況が多く存在しているのも事実です。こうした背景により、業者間の信頼関係が構築できないこと、そして、軽貨物業界の事業管理レベルが上がらないことが課題だと感じています。

今後は協力業者様とよりしっかりとタッグを組み、ともに仕事を楽しむことができる関係性を構築することに加え、軽貨物業界全体の管理水準を上げるために必要なことを一緒に検討し、実践していきたいと考えています。

「ドライバー」に対する想い

私がドライバーとして配送業務をしていた時は、軽貨物運送業界は「頑張った分、売上が上がりとてもやりがいがある仕事だ」と感じました。仕事の内容は、易しい業務から難しい業務、そして、早朝や夜間の業務など多種多様な業務があります。様々な業務の配送を経験する中で、「業務を組合せてフレキシブルな働き方ができることがこの仕事のメリットだ」とも感じ、自分で工夫しながら楽しく売上を増やしていける仕事だと感じていました。

ただ一方で、ドライバ―様が希望する業務内容とぴったりマッチする業務をみつけることが難しいのも事実です。時期やタイミングによって配送案件は異なり、流動的であるため、ドライバー様が希望する内容と完全にマッチする案件で稼働できるとは言い切れません。

譲れる条件と譲れない条件を選別した上で案件の提案を受けることが大切だと思います。そうすることで受託する業務の幅が広がり、売上を増やすことにも繋がると思います。

束原之裕(つかはら・ゆきひろ) 

他にも、ドライバー様が自身と相性の良い軽貨物業者を探すことがとても難しく、「実際に取引をしてみないとその業者の良し悪しを判断できないことが多い」という問題もあると感じています。軽貨物業者と面談する際には、その業者の組織体制やドライバー様の管理体制などをしっかり確認することがとても大切だと思います。

さらに、個人事業主に関する知識やリスクをしっかりと把握しておくことも大切です。確定申告に関する知識、ケガや病気で休んだ場合は売上がらないこと、荷物を紛失したり破損してしまった場合は自己負担で弁償することなど、こういったことを事前にしっかりと把握した上で、ドライバーという仕事にチャレンジするべきだと感じています。
また、これからはインボイス制度について理解していくことも必須になります。自身でインボイスの制度理解に努めながら、お取引がある軽貨物業者とよく相談し、自身にとって最善の選択をとることが大切だと感じています。

今後、軽貨物運送業界が大切にするべきこと

AIや自動運転技術が凄まじいスピードで進歩している現代において、近い将来、ラストワンマイルという領域では軽貨物車両が減少していく可能性があると感じています。特に軽貨物車両を多く要する荷主様に関しては、「ドライバ―不足」が課題にあがることが多いため、真っ先に改善が進んでいくことが考えられます。

こういった状況を鑑みた時、ドライバーや軽貨物業者にとっては、今後、軽貨物配送業務により多くの付加価値を加えることや独自の配送サービスをつくり上げることが課題になってくると思います。今一度、既存の配送を行いつつ、一歩先の未来についてもしっかりと考え、対策を練っていかなければなりません。

ドライバ―としては、ただ荷物を運ぶのではなく、「人」だからこそできるサービス水準の向上について真剣に考え実践し、「人」が配達することの意義や価値を向上させ、「人」による配達”自体をブランディングしていくことが大切だと感じます。今後、「人」でなければできない配達というものをいかに築き上げることができるかは、ドライバーにとって極めて重要なテーマであると言えます。

また、こうした動きを進めていくことで、ドライバ―のレイティングの基準の再構築を図ることも可能になってくるのではないかと思います。そして、それが報酬面においても軽貨物業界を魅力的な業界に変えていくことへと繋がり、さらなる人材の流入へと繋がっていくと思います。

次に、軽貨物業者としては、営業力を強化して、お取引先様の物流課題をヒヤリングし、その課題解決を一緒に行っていくことがひとつの打開策になり得るかもしれません。

お取引様と共に課題解決を図っていく中で、課題解決と同時に独自の配送モデルが誕生していくことは往々にして考えられます。こうして生まれた独自の配送モデルは、軽貨物業者にとって、他社や先端技術でも替えがきかない優位性をもった配送案件となり、大きな武器になることでしょう。

また、事業の継続や発展以外の面では、軽貨物業者は「軽貨物業界の価値やイメージを向上させる」という観点において、今後、変革をしていく必要があると考えています。

配送現場の稼働時間と同様、軽貨物業者の管理者も長時間労働が常態化しているケースを見受けることが多々あります。業界として社会的信用を獲得し、さらなる発展を遂げていくためにも、ITリテラシーを一般社会と同等以上に引き上げ、必要情報の管理や日々の作業を効率化するなど、軽貨物業界全体で業務改善を図り、健全な労働環境をつくっていくことが大切です。

このように、軽貨物業界を取り巻く環境は日々めまぐるしく変化しており、軽貨物業界に携わる人たちは、その変化への対応が求められています。私たちMIRAISは、こうした状況下においても、荷主様、協力業者様、そしてドライバー様の笑顔をより増やしていくことを目標に、これからも日々、精進してまいります。

束原之裕(つかはら・ゆきひろ)