会社には、事業運営などを通じて達成したい会社それぞれのゴールがあると思います。それはどんな状況においても変わらない、その会社における絶対的な目標であり、会社経営の指針でもあります。私たちMIRAISグループはそれを“使命”として定義しています。MIRAISグループの使命、それは「世界中の人々を笑顔に」です。
今回は、MIRAISグループの使命を決めることになったきっかけや決めるまでの苦悩、私がなぜ「世界中の人々を笑顔に」を使命として定めたのかについて、詳しく述べていきたいと思います。この使命に込めた想いや願いが少しでも伝わったら幸いです。


重松宏志(しげまつ・ひろし)
株式会社MIRAIS 代表取締役
2004年、自動車整備専門学校卒業後、トヨタ系販売会社に入社。その後、不動産会社に転職し営業の経験を積んだのち、2006年に「赤帽ジェット便」を開業。スポット配送・宅配・企業配等、多くの配送現場に従事。その時の経験と、それまでに培った営業経験を生かすべく2008年、株式会社FOX(現MIRAIS)を設立。代表取締役に就任し、現在に至る。
「“何のために”MIRAISを経営しているのか?」

私がMIRAISの使命を決めることになったきっかけは、弊社の副社長からの一つの質問でした。彼がある日、唐突に私にこう聞いてきました。「そもそも、社長は何のためにMIRAISを経営しているの?」
この問いをされたのは2020年夏ごろで、社会はまさにコロナ禍真っただ中。新型コロナウイルスの流行により、社会全体が大きな混乱と様々な変化に直面している時期で、弊社もその影響を大きく受け、売上が減少しているタイミングでした。弊社、そして社会全体に生活や将来への大きな不安が広がっていました。
「どのように売上を回復させるか」、「利益を上げるためにどのようなコストをカットすべきか」、会社を維持していくために当時、私の頭の中はそのことでいっぱいだったように思います。もちろん会社を経営していく上では資金、つまり、お金は重要です。しかし、今思えば、その時は「どうやってお金をつくるか」に思考や行動が極端に偏っていて、“自分らしくMIRAISを経営する”ということはできていませんでした。会社を経営することに対する楽しみやワクワク、やりがいを見失っていた時期だったと思います。
そんなタイミングで副社長からされた問いが、先述した「何のためにMIRAISを経営しているのか」でした。この問いを受けて、私はあることに気づきました。それは、コロナ禍において会社全体が「この先どうなっていくのか」と感じている時期だからこそ、「MIRAISが何に向かって進んでいくのか」をより明確にする必要があるということです。私自身が「自分らしくMIRAISを経営する」ことを見失っているということは、社員はもっと迷いや不安を感じているはずです。こうした状況の時でも、みんなにとって絶対的な指針となり得る明確な“会社としてのゴール=使命”を、経営理念の上位概念として設定する必要があると、この時強く感じました。こうした背景から「MIRAISとして目指すべきもの」、言い換えると「私がMIRAISという会社を通して達成したいこと」をMIRAISの“使命”として、新たに決めることを決意しました。
繰り返す自問自答…見えない使命

「何のためにMIRAISを経営しているのか」という問いに対して、私はこう答えました。「それは…考えたこともない」、これがその時の正直な答えでした。自分で会社を立ち上げてからは、ただがむしゃらに駆け抜けて、とにかく少しずつ会社を大きくしていくことに必死でした。なので、本質的なところで「自分が何のためにMIRAISという会社を経営しているのか」というのは、この時まで考えたこともありませんでした。
「考えたこともない」と答えた私に対して、彼は続けて「お金のため?」と聞いてきました。私はすぐに「いや、それはない、それは違う」と答えました。何のために経営しているかは考えたこともなかったですが、「お金のため?」と聞かれたことで、「“自分がお金持ちになるため”に経営しているのではない」ということだけは、この時自分ではっきりとわかりました。では、何のために私はMIRAISを経営しているのか。会社が先述したコロナ禍における状況下にある中で、このことを明確にする必要がありましたし、一つの問いから始まった会話から、私自身の中にも「自分が経営することの真の目的を明確にしたい」という気持ちが生まれました。
MIRAISの使命を決めるにあたって、役員からは「使命は役員間で相談して決めることではなく、社長が一人で決めるべきことだ」と言われており、私に一任されていました。使命を考える中で、とにかく何度も何度も自問自答を繰り返しました。「自分がやりたいことは何なのか」、「なぜ社長になりたいと思ったのか」、「MIRAISのみんなと一緒に実現したいことは何なのか」、あらゆる問いを自分になげかけ、私がMIRAISを通して本当に達成したいことを明らかにしようと試みました。
ところが、それが見えてこない。ぼんやり出てくるものはいくつもありましたが、どれも自分が「これだ」と思えるほどはしっくりきません。浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していました。オフィスでの業務中はもちろんのこと、出張中、会食中、さらには休日の時間まで、とにかくこの時期はすべての時間においてずっと頭の中で「MIRAISの使命とは…」が駆け巡っていました。あまりにも考えすぎて、もはや“悩み”だと感じてしまうぐらい考え続けました。現時点においては、間違いなくこの時が会社経営を始めて以降、最も悩み、考えた時期だったと言えます。
使命の決定

どれだけ考えても答えは出てこない。気がついたら、最初の「何のためにMIRAISを経営しているのか」という問いをされた日から、3か月以上が経っていました。そこで私は、ある場所に行くことを決めます。そこは、関西にある非営利活動をしている団体の本部がある場所です。高校からの友人である副社長と、高校時代に2回ほど訪れたことがあり、使命を考えている中で、なぜかふと「その場所に行ったら何か降りてくるかも」という予感がしました。すぐに副社長と子会社の社長を誘って、3人でその場所を訪れることにしました。
そこでの滞在時間はわずか3時間ほどでしたが、私の予感は的中。それまで数か月、悩みに悩んでいたことが嘘だったかのように、たった3時間の滞在で、私そして、MIRAISの使命が決まったのです。
そこでは、来場者の案内や荷物・靴の整理整頓といった全てが、奉仕活動として行われていました。お金をもらっている訳ではないのに、そこで動かれている方々は、みんなとても気持ちの良い声かけや気配り・対応をされていました。その対応を受けている私自身、本当に温かい気持ちになり、自然と表情が笑顔になっていました。その時にわかったのです。私も子どもの頃からずっと、「人を笑顔にすることが大好きだった」と。学生時代も友人との関わりの中で、相手を喜ばせることや笑わせることに全力だったと。それが自分の中での“生きがい”だったということに改めて気づかされました。大人になり、経営者となった今ですが、やっぱりこれからも「一人でも多くの人を笑顔にできるように生きていきたい」と心底感じた瞬間に、MIRAISの使命「世界中の人々を笑顔に」が定まりました。
「世界中の人々を笑顔に」

後日、会社に戻り、経営層メンバーに対して私が決めた使命の発表をしました。使命自体に迷いはありませんでしたが、みんながどのように受け取るのか、どのようなリアクションをするのかには一抹の不安はありました。しかし、その不安は杞憂に終わります。いざ、発表をしてみると、使命を聞いた瞬間、全員がすごく柔らかい良い表情をしてくれたんです。私の話をみんなが深くうなずきながら聞いてくれていました。そんなみんなのお陰で、「やっぱりこれがMIRAISの使命なんだ」と私自身、改めて確信することができました。
社員から「ウチの使命、最高ですよね。大好きです。」と直接聞くこともあります。このように使命を共感できる仲間と共に働けることは、本当にありがたいことだなと日々感じています。
当然ですが、この使命が決まって以降、会社にも色々な変化が生まれました。新しいビジネスを考える時の軸は、「利益がどれぐらいでるか」から「どれだけ笑顔にできるか」に変わりました。考えてみると単純なことで、「笑顔になる」「嬉しくなる」からそのモノやサービスにお客様はお金を払ってくれます。結果としてそれが利益になるだけの話です。使命が決まるまでは、新規事業を検討する会議でもみんなに迷いがあり、話の軸が定まらないことが多々ありましたが、今はそういったことが一切なくなりました。
他にも、使命に基づく新たな事業活動の一つとして、YouTubeで『しごとの授業』というチャンネルを立ち上げました。これは、個性と職のミスマッチを減らすことで、「笑顔で働ける人を一人でも増やしたい」という想いから始めたものです。収益という観点からみると、まだまだ難しさはありますが、それでもMIRAISとしてこのチャンネルを運営する意義はあると感じています。
また、事業活動以外では、オフィスに募金箱やワクチンに換えるためのペットボトルキャップの回収箱が置かれるようにもなりました。さらに、毎月第2火曜日は役員・社員全員で街の清掃活動も行っています。もともとMIRAISは「社会全体に貢献する」という行動指針を掲げてはいましたが、使命が決まる前は正直なところ、実際に活動を実施するまでは至っていませんでした。今、こうした社会貢献活動を実施できているのも、使命が会社にもたらした一つの大きな変化だと言えます。
今やMIRAISグループにとって「世界中の人々を笑顔に」という使命は、こうした様々な活動の原動力になっていると共に、あらゆる活動の指針として定着しています。また、この使命のお陰で、私自身もぶれることなく会社経営を行うことができています。この記事を書いていて様々なことを振り返る中でも、改めて「使命を決めて良かった」、「この使命にして良かった」と感じています。
最後になりますが、「世界中の人々を笑顔に」という使命が、とても壮大で実現するまでのハードルが極めて高いことは重々承知しているつもりです。中には大きなことを掲げすぎだと感じる方もいるかもしれません。それでも私は、この使命はMIRAISグループとして絶対に達成すべきゴールであり、私自身が成し遂げるべきことであると確信しています。これからもこの使命をずっと大切にしながら、使命の達成に向けてMIRAISグループを前に前に進めていきます。
