軽貨物ドライバーのお仕事は、荷主様から「大切な商品」をお預かりし、お客様のもとへ適切に確実に送り届けることです。その荷物が“荷主様とお客様にとって「大切な商品」である”という意識は、プロとして絶対に忘れてはいけません。
そこで今回の記事では少し視点を変えて、荷主様の業務内容や仕事への想いなどに触れることを通して、軽貨物ドライバーには“なぜ丁寧な荷扱いが求められるのか”や“なぜ正しい接遇が求められるのか”について、その理由や根拠を探っていきたいと思います。
MIRAIS公式YouTubeチャンネル『しことの授業』では、印刷会社で営業をされている小松崎様にご出演いただき、”「印刷会社営業」のお仕事”と題して、業務内容や取り組む際の姿勢などについて学ばせていただきました。その内容を振り返りながら、印刷会社を例に、荷主様のお仕事や想いに触れていきたいと
思います。
\ぜひ、YouTubeと併せてご覧ください。/
小松崎剛志(こまつざき・つよし)
2012年、大学卒業後、バイク販売会社に入社し、営業を担当。その後、広報部への異動を経て同社を退社。2019年、印刷会社に入社し、営業部に配属される。チラシ等各種印刷物やノベルティグッズの制作および進行管理を担当。
印刷会社営業の業務内容
主には、お客様からの依頼を受けて、皆さまが日頃手に取っているようなチラシやポスター等の印刷物をつくって、お客様に完成品を確認していただいた上で納品するという仕事です。お客様と工場の間に立って進行管理をすることがメインですね。他にもノベルティの商品などは外注するケースもあるので、お客様と外注先の間に入って全体の調整を行うこともあります。
1日のスケジュールとしては、一例ではありますが、まず10時頃に出社をして、メールチェックや印刷物の仕上がりの確認をします。「校正」といって、印刷物の体裁や色味などをお客様にご確認頂く前に自分でチェックをします。午後はお客様のところに訪問をし、納品見本や校正を提出し、お客様のご要望通りの印刷物になっているか、修正箇所はあるかなど、細かく確認とすり合わせをします。訪問を終えて大体16時ごろに帰社し、打ち合わせの内容を加味して制作スケジュールを組んだり、見積書をまとめたりして、18時頃には退社します。一日の中で外出している時間は平均で3、4時間ぐらいですかね。
ちなみに、この業界はGWや夏休み、年末年始などの長期休暇前が特に忙しくなるので、繁忙期は11~12月、4月~5月、7月~8月といった時期になります。
この仕事において大切なこと
客商売なので、お客様がどういう印刷物、商品をつくりたいのかをちゃんと考えて把握することが大切です。そのためには、お客様の目線に立つことがすごい重要ですね。しっかりお客様の目線に立った上でコミュニケーションをとって、ニーズを正しくしっかりと把握する。これができていないと、お客様が納得する商品をつくることはまずできません。とにかくお客様の気持ちになれるかどうかが第一ですね。
なので、能力としては、この仕事をする上ではコミュニケーション能力が大切になると思いますし、そういう意味では、コミュニケーション能力が高い人はこの仕事に向いていると思います。他にも納期を守る上で、色々な人にお願いしなければならないことも多い仕事なので、対人関係を構築する能力も必要ですし、大切だと感じますね。
やりがいを感じる時
まず、実際に自分が携わった仕事が世に出て、その制作物を街中でみたりすると「頑張って仕事したんだな」と感じますね。
他には、今考えても自分でもよくできたなと思うし、やりがいを感じたのが、すごく納期が短い案件。通常の納期は依頼を受けてから1か月が目途です。1週目にデザインをつくり、2週目に校正。残り2週間で印刷と製本をし、配送の手配等をして納品します。私が対応した納期が短かった案件というのが、ご相談をいただいてから2週間後には納品しなければいけないというものでした。他社さんにも相談されたそうですが、どこもお断りだったそうです。
この案件はデザインもできていないし、チェックする工程もスケジュールも全く組めていない状態で依頼を受けたので、とにかく仕事内容がタイトでした。先ほどお伝えした全行程を2週間でやるためには、スタートから制作物を配送して納品するまで、どの工程においてもミスが許されませんでした。私自身、工場に出向いて「何とかお願いします。」と頭を下げるなど様々な方にもご協力いただき、なんとかお客様の希望の納期に納められました。この仕事は自分でもよく頑張ったなと思いますし、やり切った時はやりがいや達成感をすごく感じました。
「ペーパーレス化」による影響と対応
ペーパーレス化の影響はあって、例えばある会社さんでは、以前はカタログを3万部刷っていたものが今では1万部のみに減っています。減らした分はPDFデータの配付をしているそうです。単純にペーパーレス化の流れを受けて売上が減少しています。
これに対してどのような対応をしているのかというと、一例として印刷物以外の物の制作をしています。「紙に印刷する」ということだけではなく、マスクやマスクケースをつくったり、他にも協力業者さんとタッグを組んでTシャツをつくったりして、「紙以外のものでも印刷や制作ができます」という売り込みをしています。
また、今までは大口案件の場合、仕分けや納品は配送業者にお願いしていましたが、可能な限りその部分も自社で請け負うようにしています。このようにペーパーレス化による売上減少に対しては、様々な新しい取り組みを行うことで新たな収益構造を構築したり、コストカットしたりして対応しているといった状況で
す。
印刷会社で働いている方の特徴
仕様を細かくチェックするなど、マメな人が多いという印象があります。お客様から「この紙のこの厚みで見積りをつくって」と依頼があった際に、「その紙って、これとこれとこれのパターンがありますけど、どの紙を使いますか?」といったように、さらに仕様を細かくヒアリングをされる方は珍しくありません。それだけ仕事に意識が向いているという証拠だと思います。
他にも、制作物があがってきたらルーペで赤・青・黄・黒の色のバランスなどを見てコメントする人が多いです。みんなすごく細かくみている。言い換えると、それだけ「ミスが許されない」、「こだわらなければいけない」、「しっかりやらないといけない」仕事であると言えます。
一つ言えるのは、みんな根底にあるのは、「お客様に迷惑をかけたくない」や「いいものを作りたい」という気持ちです。それを突き詰めた結果、細かく業務をする人が必然的に増えているのだと思います。
まとめ
印刷会社のお仕事について詳しく学び、「軽貨物ドライバーに“丁寧な荷扱いが求められること”、“正しい接遇が求められること”」の理由がよく理解できたのではないでしょうか。制作物という商品に込められた熱い想いやこだわり、それが完成するまでの工程数と関わった人の数。それらを知ると、軽貨物ドライバーが運んでいる商品が、いかに「大切な商品」であるかがよくわかったと思います。
「それだけの想いが込められた商品だからこそ大切に扱う必要がある」ことや「ドライバーの接遇一つで、お客様の商品や会社に対する印象が一気に変わってしまう」ということを配送のプロとして絶対に忘れず、これからも配送業務に従事していただけたら幸いです。