現在、日本ではフリーランスとして働く人々が増加しています。
その中でも、軽貨物運送業界はフリーランスの軽貨物ドライバーが多く活躍する業界です。

しかし、働く人を保護するという観点でみると、従来の労働法や社会保険制度は、フリーランスで働くドライバーが十分なサポートを受けられる仕組みとは言い難い状況にあります。フリーランスとして働く以上、労働環境はドライバー自身でコントロールする必要があるのです。

この記事では、そんなフリーランスとして働く軽貨物ドライバーの新たなセーフティネットになり得る可能性がある「フリーランス保護新法」に焦点をあて、その概要について探っていきます。

フリーランス保護新法とは?(概要)

フリーランス保護新法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。この法律は、個人として業務委託を受けるフリーランス(事業者)と企業などの発注事業者の間の取引の適正化、フリーランスの就業環境の整備を図ることを目的として、2023年4月28日に成立しました。施行時期は現在未定(2024年4月時点)ですが、2024年秋頃までには実施される予定です。

現在、フリーランスは企業や事業所などに雇用されていないため、労働基準法の適用外となっています。このため、権利保護が不十分であり、トラブルが生じた際の解決が難しい状況があります。このような課題を解消し、フリーランスの地位を強化するために制定されたのが、フリーランス保護新法なのです

「フリーランスと発注事業者の間の取引の適正化」について(一部)

フリーランスに業務委託を行う発注事業者に課される義務や禁止事項について、その一部を紹介します。

①業務委託時の内容明示

 フリーランスに業務委託をする場合、報酬や仕事の範囲などの取引条件を書面やメール等で明示しなければならない。

②報酬支払

 フリーランスから納品物やサービスの提供を受けた日から、60日以内に報酬を支払わなければならない。

③禁止事項(一部)

  •  フリーランスに責任のない理由で、成果物の受領を拒否すること。
  •  フリーランスに責任のない理由で、報酬を減額すること。

「フリーランスの就業環境の整備」について(一部)

フリーランスがより安心して働くことができるよう、発注事業者には以下のような環境整備を行うことが求められます。一部を紹介します。

①募集情報の的確な表示

 広告などによって業務委託募集を行う際は、正確かつ最新情報を伝えなければな らない。また、虚偽の表示や誤解を生むような表現は禁止。

②育児・介護との両立への配慮

 フリーランスと一定期間以上継続して取引を行う場合は、育児や介護と業務を両 立できるよう配慮しなければならない。

③ハラスメント対策

 フリーランスに対するハラスメント行為への適切な対応を行うために、体制整備 やその他の必要な措置を講じなければならない。

【補足】「フリーランス保護新法」と「下請法」の違い

フリーランス保護新法と類似した法律に「下請法」があります。これらは似ていますが、異なる点をもった法律です。

フリーランス保護新法と下請法は、保護範囲と規制範囲に違いがあります。

【フリーランス保護新法】

保護対象業務委託を受けるフリーランス
規制対象すべての事業者

【下請法】

保護対象資本金1,000万円以下の下請け業者
規制対象資本金1,000万円超の事業者

下請法について

下請法は、資本金1,000万円超の発注事業者にのみ規制が適用されます。一方、フリーランス保護新法では、資本金の大小に関わらず、すべての発注事業者が規制の対象となります。

軽貨物運送事業を営む法人には、資本金1,000万円以下の企業が数多く存在します。下請法においては、資本金1,000万円以下の発注企業は規制対象外となるため、この規模の軽貨物運送会社から配送業務を受託しているフリーランスの軽貨物ドライバーは保護対象外となります。

フリーランス保護新法は”下請法では保護されていなかった部分を補う制度”と言える

一方で、フリーランス保護新法においては、発注する軽貨物運送会社の規模に関わらず、軽貨物運送会社とフリーランスの軽貨物ドライバーとの間で生じる取引が規制対象となるため、軽貨物ドライバーにとっては、下請法では保護されていなかった部分を補ってくれる制度であると言えます。

まとめ

ご紹介した通り、フリーランス保護新法は軽貨物ドライバーにとって、とても重要な法律です。この法律により、業務内容や報酬などが明確化され、適正な取引が促進されることでしょう。また、発注企業側に違反があった場合は適切な制裁が加えられる規定もあることから、発注企業側の遵守意識も高まってくると思われます。

フリーランス保護新法の施行により、軽貨物ドライバーがより安心して仕事に取り組める環境が整備されることを期待しましょう。

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