みなさんが普段、当たり前に受け取っている宅配便の荷物や会社に届く事務用品など。これらの荷物を誰が運んでいるかご存じですか?こうした『ラストワンマイル』と呼ばれる荷物の配送は、我々のような軽貨物運送事業者が担っているのです。私はこの業界に17年以上携わり、様々なことを経験し、感じてきました。その中で私が軽貨物運送業に対して抱いた想いは何か。

それは「軽貨物運送業界の社会的地位を向上させたい」という想いです。

当然のことながら、現代社会において軽貨物運送サービスは、みなさんの生活を維持する上で欠かすことができない重要なサービスです。にも関わらず、同じ社会インフラとなっている他業種と比較すると、この業界の社会的地位は決して高いとは言えません。

今回は、私の「軽貨物業界の社会的地位を向上させたい」という想いや、そこに至った背景について話をしていきたいと思います。

軽貨物業界で起業

以前から「自分で起業して挑戦してみたい」という強い想いがあった私は、21歳の頃に一度も行ったことがない土地である群馬県にて、個人事業主として軽貨物運送業を開業しました。正直なところ当時の私は起業ができれば良く、業種にこだわりはありませんでした。自分を取り巻く環境を変え、仕事に専念したいという想いから、新天地での出発を決意しました。

開業当初はとにかくがむしゃらに働き、ほぼ休むことなく飛び込み営業や配送をやっていました。何をするにも初めてのことばかりで、毎日が新鮮で、たくさんの刺激がありました。
配送では、配送先のお客様から感謝の言葉をかけていただいたり、時には飲み物や食べ物をいただくこともありました。日ごろ色々な悲しいニュースや事件がありますが、こうしたお客様と触れ合う中で「世の中捨てたもんじゃないな。」と思ったことをよく覚えております。人の温かい気持ちにたくさん触れることができ、とても楽しく、やりがいを感じながら仕事をする日々を送っていました。

スタート時に感じた事

軽バン車両

しかし、決して良い事ばかりではなく、仕事をしながら疑問に思う事も多々ありました。

  • お客様から「とにかく急いで持って行ってくれ」と依頼を受け、休憩も全く取らずに急いで荷物を届けたが、お届け先から「こんな遅かったら作業が間に合わない」と一方的にお叱りを受けた。
  • 納品時に「ちょっと待ってて。」と言われ、1時間ほどその場で待たされた。その後、お詫びもなくごく普通に対応された。
  • 配送の依頼をいただき、荷物を取りに行ったら「遅いから別で頼んだ。」とその場で突然言われ、キャンセル料も支払ってもらえなかった。

当時20代前半だった私は、これらの事を「若いから下に見られているのでは……。」と自分の中で解釈し、業務中のしゃべり方・身だしなみ・発言の内容などを少しでも大人にみられるようにと意識しておりました。

成長期に感じた事

重松社長

それからさらにがむしゃらに仕事をし続け、神奈川に支店(現MIRAIS本社)を開設しました。私自身もプレイヤーからマネージャーへと立場を変え、多くのドライバーさんに仕事を斡旋する規模へと成長させる事ができました。しかし、そこでもまた疑問に思う事が多くあったのです。

  • お客様の一方的な都合で、急に契約を解除された。
  • 突然、運賃の値引きをされた。
  • 理不尽な商品破損の買い取りをさせられた。
  • 契約にない付帯業務をさせられ、料金は元契約の運賃に込みにされた。

現在も当たり前のようにCMやECサイトでは『送料無料』が謳われています。同業のある経営者が『送料無料』を謳っているCMを見た娘さんから、こんなことを聞かれたそうです。

「パパの仕事って無料なの?」

このような事が多々あり、私の中で「若いから・・・」と思っていたことが、少しずつ「もしかしたら業界自体が大事にされていないのではないか?」と日に日に思うようになりました。

この話を聞いた時、私は愕然としました。「労働には対価が伴う」という根本的なことですらも、配送業界に対しては忘れられてしまうのではないかという恐怖。こうした経験が増えるにつれ、私の中で「もしかしたら……」と思っていた考えは「確信」に変わりました。


コロナ禍になり巣ごもり需要も増え、EC市場がさらに成長を遂げている今、我々軽貨物業界は人々の生活を支える社会インフラであると強く感じています。にも関わらず、日本における世論のイメージはどうでしょうか?軽貨物運送業は社会から大切にされているでしょうか?

「時間指定の時間を厳守して配送先に行ったにも関わらず、不在のため無料で再配送を行う」ことは普通のことでしょうか?

「急に一方的に運賃を値引きされる」ことは正しいことでしょうか?

「精一杯働いているにも関わらず、子どもから『パパの仕事って無料なの?』と言われてしまう」業界は社会から大切にされていると言えるでしょうか?

私としては、現状として軽貨物運送業界が社会から大切にされているとは到底思えません。
だからこそ、私はこのメディアを通じて、軽貨物運送業が持つ社会的価値を社会に対して正しく広く発信することで、この業界の社会的地位の向上に貢献していきます。

重松社長

また一方で、私は「社会の認識が間違っている」ということだけを言うつもりもありません。現在の軽貨物業界自体にも、社会から大切にされない理由があると思います。
例えば「たくさん稼げる」と謳っておきながら、実態は売上から高額の手数料を差し引く軽貨物業者も存在します。こういった過大広告だけでなく、ドライバーに対する教育制度やドライバーの社会的常識の欠如、自身の利益を最優先に考える同業者の多さなど、業界の担い手側にも多くの課題があるからこそ、社会からの信頼を得られていないとも強く思うのです。
もちろん、先述したような自分勝手な軽貨物運送業者だけではなく、健全に経営をされている同業者も数多く存在します。

私はこのメディアを通じて軽貨物業界側の真実も隠さず発信していくことで、新たにドライバーとして働こうとしている方に、良い業者と悪い業者を見分ける目を養ってほしいと考えています。すべてのドライバーが誠実な経営をされている事業者に所属し、配送業務に従事してほしいと切に思います。
こうした人の流れを生むことにより、しっかりと教育を受けたドライバーが増え、社会から認められ大切にされる業界に近づいていくことになるのです。

もっとも、きめ細かい教育や管理をしていく上では、当然のことながら財源が必要です。世界的にみてもフリーランスを守ろうとする動きが以前よりも増してきており、フリーランスの『働き方改革』も今後ますます求められていくと思われます。こうした社会的風潮もお客様にしっかりと理解をしていただき、適正価格に基づく運賃を支払ってもらう事も、「配送」という社会インフラを質の高いものとして維持していく上では重要なことです。

こうした様々な要素が好循環していく事が「軽貨物業界の社会的地位の向上」へとつながり、配送という社会インフラを維持していくことに繋がっていくのだと確信しております。

私たちは、このメディアを通じて「すべてのドライバーが笑顔で働くことができ、そして、『我々が人々の生活を支えているのだ』と胸を張って言うことができる社会」を実現します!!!